トヨタ不況 
火曜日, 12月 22, 2009, 09:23 PM
 今日のデフレ不況の流れを作ったのは、昨年の今頃、リーマン・ショックに怖れおののいて、真っ先に自社の契約社員の首を切ったトヨタ自動車なのではないかと考えている。日本を代表する超優良企業であったはずのトヨタが、我が身かわいさに容赦なく馘首に踏み切ったことが、その後の人員削減、賃金・ボーナス削減の大きなうねりを作ってしまった。それがデフレにあえぐ日本経済の現状を象徴している。

 このときは、トヨタ自身も、そのような大きな流れの先鞭を切ることになろうとは意識していなかったとしてもやむを得ない面もあったろう。そうした大企業の姿勢を転換しきれなかった前政権の責任が大きく問われたところだ。

 しかし、一国の経済を動かしうるような影響力のある企業の行動には、それなりの自制心が求められてしかるべきだと思う。今朝の新聞を見ると、「トヨタ3年で3割減−−−部品メーカーに要請」などという文字が躍っている。こうした、我が身かわいさの企業政策が一国の経済全体にどのような影響を及ぼすことになるかということについては、すでに、歴史的にも科学的にも証明されている。

 先ごろ亡くなったアメリカのノーベル賞経済学者のポール・サミュエルソンは、その著名な教科書「経済学」の中で、「合成の誤謬」という概念を紹介している。部分的には合理的な経済行動が、経済全体としては必ずしも好ましい結果をもたらさないという摂理である。つまり、一つの企業にとっては合理的で正しい戦略であっても、それが社会全体に広がってしまうと、却って悪い結果をもたらす場合があるということであって、トヨタの戦略は、昨年もまた今年も、同じ過ちを繰り返そうとしている。

 ユニクロのような中規模の企業の低価格戦略でさえ、浜矩子さんが指摘するように、「ユニクロ栄えて日本は沈没する」と言われるくらいのインパクトを持っている。ましてや、世界のトヨタをや、ということである。トヨタがこのような方針を打ち出すことによって、世の中にまたぞろ賃金・ボーナスカット、人員削減、消費不況という嵐の連鎖が巻き起こるのではないかと危惧するのは私一人ではあるまい。トヨタは、言うまでもなく「三河の田舎企業」などという立場ではない。自らの行動が社会全体に与えるインパクトを考えて行動しなければならないし、それこそが世界のリーディング・カンパニーとしての社会的責任ではないのか。

 トヨタが今やるべきことは、全く逆に、「3年間で3割部品の値段を上げてきなさい。その代わり、品質を3倍高くしてきなさい」と部品メーカーを指導することではないか。また、新政権も、単純な価格低下を歓迎しない政策を明確に打ち出すべきであると考えるが、皆さん如何思いますか。

藤井由幸
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ものづくり中小企業の試作開発支援事業に採択される! 
金曜日, 12月 11, 2009, 04:51 PM
お客様各位

謹啓

向寒の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。また、平素は格別のお世話になり、厚く御礼申し上げます。

さて、本年度の補正予算におきまして予算措置されました「ものづくり中小企業の試作開発支援事業(第二次)」にかねて補助を申請しておりましたところ、政権交代により一時その執行が停止されておりましたが、今般競争率8倍(全国4837社中、認可は625社うち県内8社)という難関を突破して、当社のPP紡糸事業の製品開発が補助対象事業として認可されました。繊維産業に関わる中小企業として認可を受けるのは極めて例外的であり、当社の技術力と事業の方向性の正しさが行政当局によって評価されたものであります。これも偏に、弊社の事業に対する皆様の平素のご理解とご支援の賜物と心より感謝申し上げます。

この結果、当社が来年3月末までの4ヶ月間に見込んでおりました試作開発費用約2千万円(使用原料換算で約33トン)のうちの2/3、最大約13百万円の補助金を経済産業省よりご支援いただけることとなりました。

弊社といたしましては、この補助金を100%お客様に還元し、当補助金の趣旨に従って、本生産の拡大に有効に繋げて参りたいと考えております。つきましては、来年3月末までの本制度適用期間に限り、試作糸は原則としてすべて無償(1kg巻き程度の中量試作を含む)にて提供させていただきます。どうぞ趣旨をご理解賜り、なにぶん早めに試作開発のご用命を賜りますようお願い申し上げます。

謹白

平成21年12月11日

藤井撚糸株式会社
PP紡糸部営業本部長(兼社長)

藤井 由幸


冤罪はこうして作られる? 
月曜日, 10月 26, 2009, 06:30 AM
 わが社の最寄り駅は近鉄の霞ヶ浦という、いかにも田舎らしい小さな駅だが、「事件」はわりと広めのその駅前広場でおこった。

 ある朝、会社に出勤すると警察署から私に電話があり、
 「おたくの会社のTさんに警察に来てもらっています。霞ヶ浦駅の駐車場に止めてあった車にTさんがいたずらをしたということで、車の持ち主から110番通報があったんです。その持ち主は、2週間ほど前に車をパンクさせられたのだけれども、Tさんに『お前がやったのか』ときいたら『すみません』と言ったというこで、事情を聴くためにTさんにここに来てもらいました。ただ、持物を検査したり、本人の話を聞くと『やっていない』ということなので、事件性はないと判断しています。身元引受人として社長さんに来ていただきたいんです。」

 びっくり仰天して、すぐに警察に駆け付けた。Tくんというのは、軽度の知的障害があって、非常に臆病な性格で、仕事はまじめにやるけれども人様のものを傷つけるような大それたことはできるはずがないと信じていたので、本当に信じられない思いでT君を警察署へ迎えに行った。

 無事に釈放となった本人の顔を見るなり、
 「おまえ、いったい何をしたんや」
 というと、
 「僕は何にもしてへんよ」
 という返事が帰ってくる。
 「ほんまか」
 と念押しすると、
 「ほんまやて、僕、何にもしてへん。車のテールランプにほこりが積もっとったんで、指でちょっと触っただけや」
 「そこまで言うんやったら、ほんとやろう。そしたら、現場に行って何があったんか、俺に説明してくれ。」

 ということで、霞ヶ浦駅に行ってみると、確かに、駐車場(とはいっても月極めの駐車スペースではなく、人や車の出入りする駅前広場のド真中)に高級車が放置されているように見える。『パンクさせられた』というが、よく見るとタイヤがホイールから外れている。この場所でパンクさせられたのではなく,どこかでパンクした(か、させられた)車を、この広場まで移動してきたのは明白だった。

 Tくんが、その車のテールランプに指で触れたのをたまたま見ていた車の持ち主が、T君を追いかけてきて腕をつかみ、『お前、俺の車に触っとったやろ!お前が(パンクを)やったんか』と迫ると、気の弱いT君は、申し訳なさそうに『すいません』と謝る。確かに、車に触ったのは間違いないわけだから。そこで、110番通報となり、警察にまるで犯人扱いで連行されることになってしまったという訳である。何かの事情でもし警察が『白状したら家に帰してやるから、これにサインしなさい』などと言って自白調書にサインを求めたりすることがあったとすれば、気の弱いT君は、いとも簡単に『はい、わかりました』と言っていたに違いないと思うと、ぞっとする。ちょうどこの日に、栃木の菅谷さんの再審が始まるというニュースが流れていたが、『冤罪』というのはこうして抵抗しない弱い者に対して作られてしまうのか、という思いを強くした。

 この車の持ち主が、パンクをさせられた被害者ということで、多少同情すべき点はあるが、T君はとんでもない濡れ衣を着せられ、「犯人扱い」という屈辱を受けたまさしく『被害者』であることは間違いないと確信した。現場を一目見れば、Tくんがパンクの犯人でないことは明らかではないか、ということで警察に対しては、あとで強く抗議をした。また、霞ヶ浦駅に対しても、広場に迷惑駐車を放置しているということで抗議したことは、言うまでもない。


理科系大学生の企業見学会 
金曜日, 10月 9, 2009, 10:15 AM
 9月の初め、「理科系大学生の市内中小企業見学ツアー」を受け入れさせていただく栄誉を得た。地元出身の理科系の大学生などに「ものづくり」を中心として栄えてきた四日市市の特色ある産業・中小企業を知ってもらい、また、その経営者と直接交流する機会を持ってもらおうと企画された地域振興事業の一つである。

 当日は、20名ほどの参加者に会社概要や事業の考え方などを説明した後、工場内をくまなく案内し、「ものづくり」の現場をつぶさに見てもらった。こちらも学生のほうも、直接リクルートにつながるとは考えていなかったけれど、「フジイネンシ」をアピールするのにはいい機会かなと思って気軽に引き受けたのだったが、意外なほどに好評だったと聞いて、嬉しくなってしまった。後日、田中俊行市長にお会いした時も、過分の謝辞をいただき恐縮した。

先週、見学ツアーに参加された学生さんからの所感文集が届いたので、差し障りない範囲でその一端をご紹介しよう。


1.製造現場を見たり、経営者の話を聞いて感じたこと
○現場において、従業員の熱意が見られた。それは、経営者(社長)の考え方(例えば、従業員と社長が対等な立場でいることや、大した学歴がなくても、開発ができるということ。)があるためと感じられた。
○社長が社員の話をしているときにとても嬉しそうにしていたのを見て、大企業ではなかなかない光景だと思いました。社員に支えられているという社長の言葉を聞いて、素晴らしい会社だと感じました。
○色々な事に興味を持つことで、先を見ていくことができるようになっていくということを聞いて、納得をできる感じが持てた。
○会社を興したときから、目標、やりたい事がはっきりしていました。
○社員を大切にしている会社だと感じた。個人を大切にし、本人の意思を尊重している会社だと思う。現場は今日回った3社の中では一番古く、外から見ると大丈夫なのかと思える様な感じだったが、中は特殊な機械などがたくさんあり驚いた。特許の取得に関する話も、改めてものづくりの職場の本質を教えられた。
○実際に稼動している状態での見学だったので、騒音に驚いた。ただ一言にカーペットを作るという訳だけれども、糸を紡ぐことから始め、どんどん糸を作っていき、やがて何枚かのカーペットになると考えると、ものづくりは地道だなと思った。
○すごく親しみやすい社長さんで、大学で学ぶ知識が決して必要であるとは限らず、人間力や自分の考えを持つといった気持ちや精神が大切なことであるということを熱弁されており、とても為になりました。
○中小企業がグローバルに競っていくためにも、スピードが重要であること、それには常にベストを考えなくてはならないということを強く感じました。原料費、原料の貯蔵、供給の仕方、人件費などランニングコストを限りなく小さくすることの厳しさを感じました。思いが込められるから、何かしらの反応することができる「試行力=人間力」という社長の言葉が印象に残りました。
○カーペットの製造する会社を訪問したのは初めてで、とても新鮮でした。紡績会社の見たことはありましたが、実際に糸を作っているところを見られて良かったです。糸によってカーペットの出来上がりが全然違うことに驚きました。カーペットにもピンからキリまであって、高いものだと1枚で4kgも糸を使うことにびっくりしました。社長の言っていた自分の考えをしっかり行動できる人になりたいと思いました。
○事前にもらった資料を見て、「人間力とは一体どういったもののことを表すのか。」と疑問に思っていたが、社長さんの話を聞いて、仕事のときはもちろん、仕事以外の場所においても人としての魅力あふれる人物であるというものだと感じた。
○とにかく元気な社長さんが印象的でした。他の会社でもそうでしたが、機械の性能やシステムを工夫するのは何処の会社でもやっている事であって然るべきものであると思います。会社、企業も最終的には人のために人が動くものなのだから、人と人とのつながりが最も大事なのではないかと思いました。そういう意味では、自分はコミュニケーションが全くできなかったりと、人間としてまだまだできてないなあと感じました。常に先の事を考えて動いている社長の姿勢に感銘を受けました。
○外国製の大きな機械があり、扱うのには非常に気遣わなければいけないと思ったが、トラブルがあったときに海外の業者の方が現地で調べられると聞いて、そのようなところでもコストや時間を削減しているのだと思った。繊維技術はほぼ完成されているものなので、小さなところでのコストや環境に対する考えがより強く考えて、そのための自立学習がとても重要なのだと思った。
○自動化して人件費を減らしたり、原料や糸の織り方を工夫して徹底的にコストダウンが図られていた。社長もそうだが、説明してくれた小西さんは詳しく細かくわかりやすく教えていただきました。何より自分の仕事に対する情熱が感じ取れ、すごく楽しそうでした。
○勉強することは、考える力のもと。湿度、温度調整のために、窓や天井が低く設置されていた。

2.あなたが魅力と感じた企業のポイント
○タイルカーペット、自動車などのシェアが高く、人々の生活に貢献しているところ。仕事を通して人間性を育てるところ。環境問題対策をするなど行動力があるところ。社長が明るく意欲があるところ。日本に1台しかない機械があるところ。
○業務の改善等、発言できることは発言できると感じた。
○社長が社員を大事に思っていること。学歴など関係なく大事なのは技術と努力、自分の考えを持つといったところから、会社の理念などとても素晴らしいと感じました。
○企業理念であるAAA by HHH(Active,Advanced,Accountable)(Hand,Heart,Head)が魅力である。仕事をする上で大切なことである。→ 全ての仕事をするのに必要。 
○隙間産業において、いかに良い糸を低価格で作られていた点。
○【社員を大切にしているところ】
  会社で長い間(一生)働くと決める時、コストダウンのためといってすぐクビにされるより、自分の技術が必要だから頑張ろうと言ってくれる会社の方が魅力的と感じた。
【気持ちの在り方】
モチベーションが上がらないと業績も上がらないので、些細なことでもプラスで考えるのが良い。
○とにかく社長さんがすごく気さくだなと思った。重苦しい雰囲気よりも明るい雰囲気の方が活気があり、働きやすいと思った。重役の方が身近に感じられる企業。
○ニッチマーケットを展開している会社。
○少ない従業員数でも十分に世界と戦うことができるような、従業員一人一人のエネルギーとチームワークにとても魅力を感じました。
○糸を作る技術に感心しました。撚りを左右交互に撚っていくという技術を思い付いた人はすごいと思います。その技術を売りにしているところも魅力だし、そうやって新たな技術を開発できる人材がいるということがこの会社のいいところだなと思いました。
○アジアで1台だけの機械を導入するなど、生産性を上げるための努力を惜しまない企業。人間力あふれる社長。
○社長が情熱的で、人間的にとても面白い方だと感じました。企業経営の話だけでなく、人生についての社長の考えを聞くことができました。
○人と人とのつながりや信用を大切にしている事。社長の元気さ。
○現状維持ではなく、常に新しいものを取り入れ、先を見据える企業方針。教養を広めるため、様々な事に興味を持ち、自ら行動を起こすという考え。
○社長の人柄、自分の会社のことだけでなく、就職活動や社会人に必要な人間力を養うことが大切と教えていただきました。自分の会社の社員をすごく大切にしていると思い、こういう人の下で働きたいと思える人でした。

以上

藤井由幸

岡田克也外務大臣 
日曜日, 10月 4, 2009, 10:47 PM
 先の総選挙以来初めて地元に帰って来られた岡田代議士の、外務大臣就任報告会というのが、10月4日(日)四日市のホテルで開催されたので、さてどんな顔で凱旋されるのやら見てやろうということで、私も末席に参加させていただいた。

 野党の駆け出しのころからずっと応援をさせていただいていたが、10人程度のミニ集会で議論を戦わせた時のような近さはもはや卒業され、屈強なSP数人と多数の報道陣に取り囲まれて会場に入場された時には、少し体が小さくなられたのではないかと錯覚してしまった。 四日市市長の歓迎のあいさつの後、演台に立たれた岡田さんは、10分ほどの短めのスピーチの中で、地元民の変わらぬ支持への感謝を述べられたあと、次の二つのことを外務大臣としての初仕事としたと云われた。

 ひとつは、アメリカとの「密約」に関する調査を期限を切って実施するように、事務次官に命じたこと、そしてもう一つは、記者会見をそれまでの記者クラブの会員だけではなく、雑誌記者、外国メディア、フリー・ジャーナリストにも広げるようにしたということ。いずれも、情報公開の在り方についての大臣としての見識を問われる問題であり、岡田さんらしい公明正大なやり方だと思った。 ただ、外務大臣として鳩山総理から任命されたのは、本当のところはどう感じていたかといった際どい話は出てこなかったのは、公式の場であるしやむを得ないとはいえ、残念な気がした。

 その後、私の近くまで来られる場面があったので、「岡田さん、ハードスケジュールでしょうけど、これからが肝心ですから、体を壊さないようにがんばってくださいよ」と声をかけると、「藤井さんのようにいつも元気でいられるといいけど、今朝6時半に、カンボジアから中部空港に着いたばかりだし、海外出張が多いと時差でよく眠れなくて」とおっしゃる。すかさず、「海外出張の時には睡眠薬を処方してもらって、むりやりでもきちんと睡眠をとらないとだめですよ」といったものの、あとで、この日の朝中川元財務大臣が睡眠薬が原因かもしれない変死で発見されたと聞いてぞっとした。 少しお痩せになったようにお見受けしたが、本人も気にしているらしく、「健康増進のために、ゴルフでもやりたいんですけど時間がなくてねえ」という愚痴のようなため息が口をついて出てきた。

 これで、話は立ち消えになってしまったのだけれど、本当はもう一言だけ申し上げたかった。それは、「政治家は声が命ですよ。声に力がないと、語る言葉に説得力がない。だから、声の力を失わないように体調を整えてほしいんです。できれば、プロのコーチについてボイス・トレーニングをやるくらいのことを考えてほしいんです」ということ。これは、また次回にしよう。



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