近鉄電車で事件発生?!(その2) 
木曜日, 1月 28, 2010, 12:32 PM
 「事件(その2)」は、実は、「事件(その1)」のおよそ2カ月ほど前、昨年の11月上旬のことだったけれど、今近鉄特急に乗っていて、急ブレーキがかかって電車が停止したことで記憶がよみがえってきた。

 危篤になった私の母を見舞いに、次男が東京から帰ってくると言うので、近鉄冨田駅に出迎えに行った時のことだ。駅の西側に、最近できたバス乗り場兼車寄せのスペースがあり、そこに車を止めて、「もうそろそろ次男の乗った急行が名古屋から着くころだな」と思って、私のいる場所からは2,30メートルほど離れているが、駅のプラットフォームのすぐ北側にある踏切の方を何気なく見ていた。

 踏切の警報機が「カン、カン」と鳴りだして、「ああ、やっと次男の電車がついたな」と思ったときだった。警報の鳴り始める直前に、踏切の南側を西から東に乳母車を押して横切ろうとしている老婆の姿が見えた。この踏切は、近鉄名古屋線のほかに、三岐鉄道も走っているので、横断するのには時間がかかる。「早く渡りきるといいのにな」と思っていると、案の定、向こう側の踏切の遮断機が下り始める。「さあ、しようがないから、遮断機をうまくくぐって渡るんだよ」と思いながら、なお様子を見ていると、なんとこのおばあさんは、降りた遮断機のすぐ手前に乳母車をとめて、「どっこいしょ」とばかりに背筋を伸ばして、後ろ手に腰をたたき始めるではないか!

 「おい、おい、そこは息子の乗った電車の通る線路の真上だよ!今から走って行って、間に合うだろうか」と思って、乗っていた車から飛び降りると、おばあさんの前の遮断機の向こう側に止まっていた乗用車から、中年の婦人が、やっぱりあわてた様子で出てきて、おばあさんを引きずるように踏切の外側に連れ出した。すぐそのあとに、異変に気付いた駅員が二人大慌てに走ってきて、おばあさんを抱きかかえ、踏切内にあった乳母車をかたつけた。この間1、2分もあっただろうか。

 「踏切の内と外の区別がつかないなんて、このおばあさんも、きっと、母と同じ認知症なんだろうなあ。家族はどうしているんだろう。おばあさんが徘徊して家族が捜しているんじゃなかろうか」などと、思いを巡らした。降りてきた息子に「事件」のことを話すと、「そういえば、駅の手前でしばらく電車が止まっていたよ」という。「そうか、電車の運転手さんも気づいたんだな」と合点がいった。母は、この「事件」のすぐ後に息を引き取ってしまったけれど、中年の婦人、駅員さんたち、電車の運転手さんのチームワークで命拾いしたあの老婦人は、今頃どうしているのかしら。母の分まで長生きしてほしいなあと願うばかりである。


藤井由幸
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ものづくりの意気込み 
火曜日, 1月 12, 2010, 04:27 AM
 きのう、大阪の和泉市にあるH社から、H社長と担当のMさんが 来社されました。H社は主にウールを素材としたウィルトンカーペッ ト(手織りに近い高級じゅうたん)を作っている会社ですが、当社にて、ナイロ ン・PPなどのフィラメント糸やその加工方法について勉強して、より良いカー ペット作りに活かしたいということで、非常に熱心に勉強して帰られました。

 本物のものづくりに懸ける同社長の意気込みがこちらにもひしひしと伝わり、私の方も大変勉強になりました。「安いもの」ではなく、「安くて良いもの」の普及に力をあわせようという話で締めくくりました。

藤井 由幸


近鉄電車で事件発生!? 
日曜日, 1月 3, 2010, 10:35 PM
 正月2日の昼下がり、私は、四日市での高校の同窓会に出席するため電車に乗ろうと、自宅近くの阿倉川駅のホームで電車を待っていた。正月のこの時間に外出する人もまばらで、鈴鹿おろしの風がほほをなでる心地よさに浸っていたが、ほどなく電車が滑り込んできた。

 ドアが開いて、電車に足を踏み入れようとすると、向こう側のドアの左側に、携帯電話を握り締めてなにやら話しをしながら、お尻がベンチシートからずり落ちるのではないかと思うほど浅く腰掛けて、ジャージを穿いた足を大きく前に投げ出している長髪の若者の姿が飛び込んできた。私は、一瞬にして「こりゃいかん」とドアを入って右側に歩を進め、この青年とはドアをはさんで対角線の側の誰もいないベンチシートに腰をおろした。

 次の川原町駅を過ぎても、なお、青年の携帯での会話は続いていて、ああ、このままではきっと次の四日市駅で電車を降りるまでずっとしゃべり続けるんだろうな、と思ったそのときだった。なんと青年は、大きな笑い声を上げたかと思うと、のどに痰をつまらせ、あろうことかそのまま、痰をペッとドアの前に吐き捨てて、平然と電話を続けているではないか!

 おいおい、冗談じゃない。青年の高笑いの顔と、吐かれた痰を見比べ、持っていたワインの首の部分を握り締めて、あっちのほうを向いて平然と携帯電話で話しを続けている青年のほうを睨んだ。そして、「やりすぎたらアカンぞ!」と自分に言い聞かせながら、青年のほうへ歩き出そうとして腰を浮かせようとしたまさにそのとき、青年の真向かいに座っていた50歳くらいの二人組みの中年の男性の一人から声がかかった。

 「何しとんのや、おまえ!そんなとこに痰を吐いたら人が迷惑することくらい分からんのか!

 落ち着いた、ドスの利いた声だ。青年はどう反応するのか。私は、上げかけた自分の腰をシートに下ろして、成り行きを見守った。すると、青年はなにやら小声でささやいて携帯を切った。そして、謝るでもなく、前に身を乗り出した。一瞬、私は体を硬くして身構えたが、次の瞬間、青年から思わぬ言葉が出てきた。

 「おじさん、ティッシュ持っとらへん?」

 「ああ、持っとるよ。これを使いな。」

 と言って、中年男が青年にポケットティッシュを一袋手渡す。すると、青年はそのティッシュで自分の吐いた痰を拭き取りはじめた。そのとき丁度電車が四日市駅に滑り込み、ドアが開くと、青年は何も言わずにその汚れたティッシュを持って電車を下り、目の前にあったゴミ箱に投げ入れると、早足で階段を駆け下りていった。それを見て、私もようやく緊張感から解き放たれ、電車を降りようと立ち上がった。降りる間際に、まだシートに腰掛けていた中年二人組みのほうを見やると、一瞬目が合い、お互いにニコリと目配せを交わした。事件は終わった。四日市の中年もそして青年も、なかなかやるやないか、と私は思った。

藤井由幸


トヨタ不況 
火曜日, 12月 22, 2009, 09:23 PM
 今日のデフレ不況の流れを作ったのは、昨年の今頃、リーマン・ショックに怖れおののいて、真っ先に自社の契約社員の首を切ったトヨタ自動車なのではないかと考えている。日本を代表する超優良企業であったはずのトヨタが、我が身かわいさに容赦なく馘首に踏み切ったことが、その後の人員削減、賃金・ボーナス削減の大きなうねりを作ってしまった。それがデフレにあえぐ日本経済の現状を象徴している。

 このときは、トヨタ自身も、そのような大きな流れの先鞭を切ることになろうとは意識していなかったとしてもやむを得ない面もあったろう。そうした大企業の姿勢を転換しきれなかった前政権の責任が大きく問われたところだ。

 しかし、一国の経済を動かしうるような影響力のある企業の行動には、それなりの自制心が求められてしかるべきだと思う。今朝の新聞を見ると、「トヨタ3年で3割減−−−部品メーカーに要請」などという文字が躍っている。こうした、我が身かわいさの企業政策が一国の経済全体にどのような影響を及ぼすことになるかということについては、すでに、歴史的にも科学的にも証明されている。

 先ごろ亡くなったアメリカのノーベル賞経済学者のポール・サミュエルソンは、その著名な教科書「経済学」の中で、「合成の誤謬」という概念を紹介している。部分的には合理的な経済行動が、経済全体としては必ずしも好ましい結果をもたらさないという摂理である。つまり、一つの企業にとっては合理的で正しい戦略であっても、それが社会全体に広がってしまうと、却って悪い結果をもたらす場合があるということであって、トヨタの戦略は、昨年もまた今年も、同じ過ちを繰り返そうとしている。

 ユニクロのような中規模の企業の低価格戦略でさえ、浜矩子さんが指摘するように、「ユニクロ栄えて日本は沈没する」と言われるくらいのインパクトを持っている。ましてや、世界のトヨタをや、ということである。トヨタがこのような方針を打ち出すことによって、世の中にまたぞろ賃金・ボーナスカット、人員削減、消費不況という嵐の連鎖が巻き起こるのではないかと危惧するのは私一人ではあるまい。トヨタは、言うまでもなく「三河の田舎企業」などという立場ではない。自らの行動が社会全体に与えるインパクトを考えて行動しなければならないし、それこそが世界のリーディング・カンパニーとしての社会的責任ではないのか。

 トヨタが今やるべきことは、全く逆に、「3年間で3割部品の値段を上げてきなさい。その代わり、品質を3倍高くしてきなさい」と部品メーカーを指導することではないか。また、新政権も、単純な価格低下を歓迎しない政策を明確に打ち出すべきであると考えるが、皆さん如何思いますか。

藤井由幸
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ものづくり中小企業の試作開発支援事業に採択される! 
金曜日, 12月 11, 2009, 04:51 PM
お客様各位

謹啓

向寒の候、貴社ますますご盛栄のこととお慶び申し上げます。また、平素は格別のお世話になり、厚く御礼申し上げます。

さて、本年度の補正予算におきまして予算措置されました「ものづくり中小企業の試作開発支援事業(第二次)」にかねて補助を申請しておりましたところ、政権交代により一時その執行が停止されておりましたが、今般競争率8倍(全国4837社中、認可は625社うち県内8社)という難関を突破して、当社のPP紡糸事業の製品開発が補助対象事業として認可されました。繊維産業に関わる中小企業として認可を受けるのは極めて例外的であり、当社の技術力と事業の方向性の正しさが行政当局によって評価されたものであります。これも偏に、弊社の事業に対する皆様の平素のご理解とご支援の賜物と心より感謝申し上げます。

この結果、当社が来年3月末までの4ヶ月間に見込んでおりました試作開発費用約2千万円(使用原料換算で約33トン)のうちの2/3、最大約13百万円の補助金を経済産業省よりご支援いただけることとなりました。

弊社といたしましては、この補助金を100%お客様に還元し、当補助金の趣旨に従って、本生産の拡大に有効に繋げて参りたいと考えております。つきましては、来年3月末までの本制度適用期間に限り、試作糸は原則としてすべて無償(1kg巻き程度の中量試作を含む)にて提供させていただきます。どうぞ趣旨をご理解賜り、なにぶん早めに試作開発のご用命を賜りますようお願い申し上げます。

謹白

平成21年12月11日

藤井撚糸株式会社
PP紡糸部営業本部長(兼社長)

藤井 由幸



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