月曜日, 1月 29, 2007, 06:09 AM - 2007年01月
会社の幹部の一人から社員の能力について相談がありました。曰く、命じたことを、その通りになかなか出来ない社員がいる。社長流の「出来ない人も支援する」というのにも限界がある。もう少し「効率」のことも考えてはどうか。以前どこかのセミナーで、「リストラも出来ない会社は伸びない」と聞いたこともある。私は、彼にこういいました。「私はむしろ、リストラしか出来ないような会社は伸びないと思う」と。それと、もうひとつ私が事業をする中で、どうしてもこだわりを持っている点があるのです。それは、能力のある人も、それほどない人も、必ず社会には貢献できることがある。私は、たとえ世間からは能力的に劣るといわれるような人であっても、会社の中で何かしらの役に立って、充実感を味わってほしい、そういう場を提供したいがために事業をやっているんだ、という思いです。能力がないということで、人を区別してゆけば、マイノリティ（障害者、子育て女性、外国人などの所謂社会的弱者）への差別につながってしまいかねないと思うのです。
私は、世の中には、能力のある人、ない人（ある、ない）という区分の基準が縦軸にあるとすれば、横軸には、努力して意欲的にやろうとする人、しない人（する、しない）という基準があるように思います。能力があり、かつ、意欲的にやろうとする（ある、する）人が一番すばらしく、逆にどちらもない（ない、しない）人が一番ダメなように考えられるかもしれませんが、私の意見は違います。一番素晴らしいのは、能力はそれほどでもないけれども、意欲的に取り組もうとする（ない、する）人。一番ダメなのは、能力はあるのに、それを使おうとせず、だらだらと適当に流してしまう(ある、しない)人だと思っています。判断の基準は、常に「する」人に光を当てるということであって、「ある」人を尊重し、「ない」人を排除するということであってはならない、と考えています。
その基準からすると、どうしても納得できないのは、昨日の日曜日のＮＨＫの討論番組で、自民党の幹事長が語っていた言葉です。教育現場で重いうつ病に罹って治療を受けている教師が４千人もいるという報告に対して、「そういう先生にはお気の毒だけれども、生徒のことを考えれば、教員資格に期限を設けて再テストをするという篩いに掛ける中で、退場いただかなければならん場面も出てくる」という趣旨のお話をされました。私は、逆ではないかと思うのです。能力は飛びぬけて高くはないかもしれないけれども、教育現場で、子供たちとの或いは教師同士との葛藤に悩みぬかれた、まじめな先生が精神的な弱さを暴露することになってしまうのが、大部分のケースではないのでしょうか。むしろ、そういう先生方の悩みを教育に携わるすべての人、（同僚の先生も、学年主任も、教頭も、校長も，教育委員会も、行政も，政治家も）が共有して、様々な現場の悩みの原因を探り、解決の方法を模索するのが、まず第一にやるべきことではないのかと思うのです。そうでなければ、たとえばいじめの問題など、解決できるはずがありません。
教育には、教える者も教えられる者も「資格のないものは排除する」という論理よりは、多様性を容認する懐の深さこそが必要であるように思われてなりません。
コメントを書く
| related link
木曜日, 1月 25, 2007, 04:59 PM - 2007年01月
安倍内閣の目玉政策の一つである、「教育再生」についての答申がまとまったと、新聞で報道されています。ただ、多少なりとも教育に携わったことのある私としては、納得のいかない点が多いんです。特に、「いじめをする子供を出席停止にできる」「教員資格に期限を設けて、ダメ教師をクビにできるようにする」などといった、厳罰主義、というか、良いものだけを採るという『純粋培養主義』のような考え方には、違和感を覚えます。きのうたまたま、二人の教育の専門家の意見を耳にし、目にしました。ひとりは、朝のＮＨＫラジオの番組に電話取材で答えていた、早稲田大学の喜多明人教授です。教育の本旨は、「選別すること」ではなく、「支援すること」ではないかというのが彼の主張であると理解しました。教育の現場では、先生も子供も自信を失いかけている。そのような現場に、いじめをする子への厳罰主義を持ち込めば、「見つかりさえしなければいいだろう」と却っていじめが陰湿化することになる。また、先生は、クビにならないためにどうするか、ということに汲々として、肝心の子供の教育がおろそかになる、という論法です。
学校は、大きな実験場であって、いじめっ子もいじめられっ子も、色々な子供がいて、その中で生きる知恵、社会生活のすべを学んでいくというのが、学校の一つの役割ではないのかと私は思っています。そんなことを考ええいたら、日経新聞に、松井彰彦東大教授の「ヒューム『人性論』」という記事を見つけました。人間は、生まれつき理性が備わっているというよりは、経験によって物の見方が変わってくるという考え方を採った人です。「三つ子の魂百まで、ということわざ通り、一度形成されてしまった社会像はなかなか変更されない。教育現場において、ローモデルに接する機会や多様な背景を持つ子供たちの存在は、子供たちに偏見に満ちた社会像を持たせないために、なくてはならないものなのである。」というヒューム流の人間科学の帰結を示す記事を読んで、わが意を得たりと、得心した次第です。
いじめっ子を排除するのではなく、彼らをこそ教育するのが、学校の役割であるし、ダメ教師をクビにすることを考えるのではなく、適宜再教育、トレーニングを施して、教員の全体的な質のレベルアップを図ることが本筋なのではないでしょうか。
火曜日, 1月 23, 2007, 08:32 PM - 2007年01月
きのうから、３人のＧＭ（ジェネラル・マネージャー）に「業務日誌」を社長宛（写、他のＧＭ）のメールの形で、一日原則３項目、箇条書きにて書いていただくようにお願いしています。目的は色々ありますが、� 仝斥佞世韻任和�りない部分を補い、また、確認する。
�◆‘�々の出来事をよく観察し、記録として残す。
�� お互いのコミュニケーションを良くする。
�ぁー勸�の皆さんからの意見を吸い上げてもらう。
�ァ＾�い情報を、握らず会社全体で共有する。
というようなことです。
２．世間では、「不二家事件」とか「あるある納豆騒動」とか「北見ガス漏れ事件」とかいうように、企業の存立そのものを揺るがしかねないような、大きな不祥事が起こっています。これらは、いずれも現場の人は分かっていたのに、組織として適切な対応がとれなかった、あるいは、トップが分かっていたのに、適切な対応をとらなかった、ということで、傷口を大きくしてしまったものです。これらは、私たちにとっても、他人事ではありません。
３．毎日毎日、仕事をしているわけですから、私たちは、少しずつ「改善」をしていかなあかん。こういうことはまずいんではないか、こうした方が良いんではないか、ということをまな板の上に乗せて、会社全体としてみんなの力で料理していこうやないですか。それが本当の会社の力になるものやと、私は思っています。「何事も、包まず，隠さず、閉じ込めず」で、風通しの良い、明るい職場を作りましょう。
月曜日, 1月 22, 2007, 06:05 AM - 2007年01月
今朝の新聞には、「そのまんま東氏、宮崎県知事に当選」という記事が踊っていました。東さんが、事前の世論調査で優勢だと伝えられたときには、青島幸男東京都知事や横山ノック大阪府知事といった「タレント知事」と同じように、立派なことは言うし、タレントとしての知名度があって選挙には勝つんだけど、結局は何もできない、何もやらないうちに終わってしまう、ということになるんやないかと心配していました。東さんが選ばれたのは、役人出身の人や、政党の押す候補者では、色々なしがらみを打ち破れないんとちゃうか、という県民の既存の政治勢力に対する不信感の裏返しではないかと思います。東さんのこれからの活躍を素直に期待したいと思います。それにつけても、既成政党のふがいなさは一体どうしたことだろう。安倍内閣の支持率はどんどん下がっていくのに、与党の支持率が下がるわけではなし、民主党の支持率が上がるわけでもない。安倍内閣を支持しなくなった人のすべてが無党派に回ったような勘定です。宮崎県知事選挙に候補を出すことさえできなかった民主党には、もう少し奮起してほしいものだと思います。タレント候補がいいのかどうかは分かりませんが、県の再生に一肌脱ごうという気骨のある人を一人も探せないとは、あまりに情けないじゃないですか、小沢さん。これでは、夏の参議院選挙が思いやられますね。
木曜日, 1月 18, 2007, 11:25 PM - 2007年01月
きょうは、四日市大学での非常勤英語講師としての最終講義をしました。今学期でちょうど丸五年になりますので、本業に復帰するいい潮時かなと考え、これを機に講師を辞めようと決意したからです。この間、週に一回ではありますが、学生に教えるというよりは、学生といっしょになって、私も勉強させていただくいい機会を頂いたようなものだと思っておりました。若い学生諸君からは、いろいろな意味でいい刺激を受け、活力をもらったような気がします。実際、「第九合唱」やオペラ入門、地域の政治・経済への関心など、プライベートで新しい取り組みを始めたのも、同じ時期になります。ただ、この間、社員のみなさんには、毎週木曜日の朝になると決まって私が外出するということで、何かと不便を掛けてきました。私のわがままを許してくれた社員の皆さんと、私のプロらしからぬ、ただ熱いだけの講義に付き合ってくれた学生諸君に心から感謝します。ありがとう。
今日の最終講義では、日本国憲法の前文（もちろん、英文！）を、私の解説を交えて音読してもらいました。日本語でも普段はあまり使わないような言葉が連続していて、大変だろうなとは思いましたが、逆に、格調は高く、自分で何度読んでもその響きに感動します。先の戦争に対する反省を踏まえ、国民主権に基づく政治体制を通じて世界の平和と安定に貢献したい、と高らかに宣言するこの文章は、日本人として、大いに誇りを持つことのできるものだと考えています。「憲法改正」ということが、声高に叫ばれるようになってきましたが、茲に書かれた崇高な理想の追求の表現は、弱めないでほしいものだと願っています。皆さんも一度、お手許の六法全書を開いて、憲法前文の音読に挑戦してみませんか？
2 comments
( 82 views )
| related link
Next
Avatar
